重力ピエロ(1)

 重力ピエロを鑑賞。

 原作は伊坂幸太郎。やばいな。名手じゃないか。死神の精度で感動した経験がある。期待しながら映画を見始めた。


 ●渡部篤郎の演技、地上波放送できないのでは?

 渡部篤郎の演技がやばい。一見、普通の人物に見える。しかし強姦を悪いこととは思っておらず、反省することもできないのだ。しかも強固な強姦理論で自己正当化していて、普通の論客程度では論破できない。

 いわゆるサイコパスを演じてるわけだが、普通な感じと強姦が平気な感じの両方を、同時に演じなければならないので、非常に難しい役どころなのだ。

 刑法39条という映画で堤真一が多重人格者を演じ、それも迫真の演技ですばらしかった。

 しかし多重人格だから、「今は人殺しのできない人格ですよ」「そして今から人殺しのできる人格になりますよ」という境界線がはっきりと見えるのである。

 つまり普通の人格と、殺人人格を別々に演じてるにすぎない。

 同時に演じてるわけではないのだ。

 今回の渡部篤郎の場合、普通の人格と強姦人格が混ざった状態で、同時に演じなければならない。よって多重人格よりも、難しいことを要求されているのである。

 そんな難しい役なんだが、ここに落としてくださいねという、落としどころを間違えなかったと感じた。これが強姦が好きで好きでたまらない……というような、わかりやすい狂気で演じられたら、理解不能な恐怖はなかったろう。

 とはいえ渡部が語る強姦理論、内容が内容すぎて、ちょっと地上波では放映できないのではないかと感じた。なんかこう、正論っちゃ正論なんで、余計にキツいとゆうか。