加納典譲さんのこと(3)

 加納典明は実の息子の、加納典譲を殴る男だったのだ。

 そこまでする理由は色々と考えられる。

 息子がカメラマンになろうというのだから、一人前に育てるべく厳しくやるしかない。殴ってでも一人前にするという教育方針。

 「典明さんは息子に甘い」などと業界人に思われたりしたら、実子の典譲のためにもならないし、加納典明のメンツにもかかわる。むしろ「そこまで厳しくしなくても……」と、周囲に思われるくらいでちょうどいい。だからヘマしたら殴る。

 そのへんが理由ではないのか。

 アシスタントの目から見ても、「典明さんは典譲さんに厳しすぎる」ように見えたフシがあるのだ。

 もちろんアシスタント出身のカメラマンが、はっきりとそう言ったわけではない。師匠の悪口と解釈されると困るので、うかつのことは言えんわな。

 しかしポロポロと漏れる逸話を総合すると、実子を殴っていたし、鬼軍曹と化して激しく厳しく育成していたようなのだ。そして殴られたアシスタントは加納典譲だけなのである。

 もちろん、私の知る限りの話でしかなく、逸話を総合しただけの話だよ。

 現実は違うのかもしれん。

 厳しすぎる教育方針のせいか、典嬢さんは性格的には腰の低い人になり、技術的には高レベルのカメラマンになった。写真だけではなく、動画も撮れなきゃマズい時代になると予見して、動画も撮れるカメラマンになった。

 加納典明の息子だからといって、コネ的な部分で何か得したことはひとつもなかったんじゃないかな。私も名刺交換したら「加納典譲」とあるので、加納典明のリスペクターなのかと思ってたら、実子だったので驚いた記憶がある。

 ご本人が読んだら怒られそうだな。

 すみません。

 話を戻すと、そうゆう人生経験を積んだ男だから、業界内での評判も良く、また実力あるのだと強調したいわけである。加納典明加納典譲も、立派だ。

 ……で、今回の炎上の件は色々と残念なわけである。

 一般の世界ならばセクハラは大問題。問答無用で張本人は社会的制裁を受けるべき。

 しかし本件は「グラビア業界」という特殊すぎる世界である。

 モデルの女のコをリラックスさせるために、Tバック1枚になって撮影する男性カメラマンが2人いて、どちらも売れっ子という凄い業界なのである。

 頭おかしいだろ……と皆さんは思われるだろうし、私もそう思う。しかしつくり笑顔ばかりお上手なモデルから、他のカメラマンには撮れない笑顔を撮影する為には、それくらいはやらないといかん現実もあるのだ。

 ロケ先の温泉で男性スタッフと一緒に風呂に入ったら、男性カメラマンの尻にTバックの白い日焼け跡が残っていて、男性スタッフ全員がどんびきしたりとか、常軌を逸した逸話もある。

 頭がおかしい業界なのだから、スタッフ全員が頭おかしくならなければならない現実もあるのだ。職場で中年男がTバック1枚だったら、それはセクハラである。問答無用だよな。しかしグラビア業界ならば、それは高い職業意識の現れなのである。

 しかも、その売れっ子カメラマンの2名が撮影するモデルは、申し訳ないけど今回の炎上の発端になった女性よりも、はるかに格上のモデルたちだったりする。ヤンジャンヤンマガに出てたコたちだ。

 そして彼女たちはそれを納得している。Tバックカメラマンと交際してしまうコもいたりする。

 で、カメラマンの欲情が、そのまんま写真や動画に写しこまれたほうが良いものになったりする現実もあるのである(そうならない時も普通にある)。

 で、なんとなく着地点がどんな感じになるのか、妄想してみた。

 

 1.モデルの女のコに対してギャラの上積み。

   ギャラ増額ぶんはカメラマンが負担することも視野にいれる。

 

 2.加納典譲ないし、かかわりの深い会社からDVDを撮影する場合、

   可能な限り某エロ下着ブランドものを無償提供してもらうかわりに、

   某エロ下着ブランドの宣伝に可能な限り協力をする。

 

 こんな感じになるのかなあ……という気がするのだ。モデルのコには納得できない不満はあるだろうが、可能な限りのギャラアップで誠意を見せるしかない。なにしろ特殊な業界なのだから。

 本件にからんできたエロ下着ブランドのデザイナー&販売者の女性に関しては、せっかくエロDVDむきのいい下着をつくっているのでるから、今後は無償提供してもらえばいいではないか。制作費の節約になるしな。

 タダで提供……というのが非常識に思われるかもしれないが、衣装の打ち合わせの段階から参加してフィッティングなどをし、その様子を自分のSNSなどで発表できるのだから、良い宣伝にもなるだろう。

 本件に関わった人たちが完全に納得することなど絶対にない。

 ないなりに、「それなりの納得」を皆がする着地点を探さなければならないだろう。

 そして本件がなんだか虚しいのは、グラビア業界の「貧困」が浮き彫りになってしまった点である。

 (続く)