武田砂鉄は辛辣

 武田砂鉄は辛辣だよなあ。

 ピチカートファイブを目指すも、無駄なセックスや望まない妊娠してる女性を冷静に描く。同情や共感はない。夢ばかり見て、現実を見れない女性を突き放して観察してるようである。

 気持ちはわかるんだが……。

 90年代的な人物像で、ガチ(本気)でピチカートファイブを目指してしまった女性の不幸を描いた作品で、世界観的には古いのではなかろうか?

 現在の人間はもっと冷めてるように見えるのだ。

 ピチカート的な音楽を歌ってYouTubeに投稿。イイネがついたりつかなかったりして、喜んだり落胆したり。強烈な何かはないが、それなりに満足。

 グッズを自主制作するも、ほとんど売れない。でも最小ロットで制作したんで、大損こいてるわけでもない。旅行に行くのを、一回がまんした程度の損失。ダンボールに詰まった在庫の写真を投稿したら、イイネがついてそれはそれで嬉しいものだったりもして。

 下手したら、ピチカート本人からコメントもらう場合もあるからなあ。「ウチらもグッズの売れ残りに頭かかえた時もありますよ」なんてね。

 ガチに本気でピチカートを目指したから不幸になっただけで、ピチカート的な何かをやって、ピチカートごっこをしたいだけなら、それなりに楽しく幸せに過ごせるわけだ。SNSをやればいいだけだし。

 私は90年代の人間なので、ピチカートごっこで満足する連中をガチではないフェイク野郎(嘘な偽物)と軽蔑した時期もあるのだ。

 でも才能もないし、そんな努力したいわけでもないし、努力する暇がそもそも無い。だって定職についてて、その定職が忙しい。現在の恋人と結婚もしなきゃで、未来の準備もあるわけで……。なんて、地に足のついた幸せな人生を送っていたら、本気でピチカートを目指す必要もないわけだ。

 90年代の私は、そんな人生を全否定した。でも2020年代の私は、それの何がいけないのかサッパリわからないのである。むむむ。

 別にそれでいいんじゃないかなあ。