マイルド底辺(1)

 底辺生活はみじめなものだ。収入アップしようと努力するのに、年収は下がる。こうなったのは自分のせいと言い聞かせ、さらに努力をするが年収は下がる。

 努力が足りなかったからと、自己分析。

 さらなる努力をするが、年収は下がる。

 気がめいること10年くらい。あの時にああしとけばよかった、こうしとけばよかった。そんなことばかり考えてしまった。

 あくまで自分的にだが、さんざ努力したのだ。

 それでこれか……と気分はガン落ち。自分を責め続けた。そして最終的にたどり着いた。

 ぜんぶ不況が悪い!

 自分は悪くない!

 自分は悪くない! すべて日本のせい!

 ……って、そこで全て不況や日本のせいにしてしまう自分に驚いた。しかも自分に何の責任もなく、なんも悪くないと思いはじめたことにも、驚いてしまった。

 最も驚いたのは、気分がすっきりして、前向きな気分になれたことだ。もう少し、がんばってみようという気持ちがこみあげてきた。

 努力が足りない自分のせいと、自分を責めてた時よりも、自分は悪くない不況のせいと甘えてるほうが、なぜか努力の量は増えている。

 この現象は何なのかなあ……?

 普通に他人のせいにせず、自分のせいにしたほうが前向きに努力できるはずなのだ。

 しかし自分を責め続けて限界に達した場合、他人のせいにした方が気持ちが楽になるし、むしろ努力するようになるのである。

 もしかして10代や20代までは、自己責任でヒリヒリ努力するほうが、人間は伸びるのかもしれない。限界に達してから、実力がじわじわとついてくるのである。

 しかし30代や40代になると、自己責任でヒリヒリやるのは体力的に無理だ。歯をくいしばっても20代のような無理はきかない。努力するにも限界があるのである。

 心がもたなかったりするし。

 自分は悪くない。悪いのは他人! そうやって気持ちをリラックスさせながら、現状の自分にできる努力の全てをやるのが年相応なのかもしれない。

 努力をするが、自分がつぶれるギリギリまでは追い込まない。追い込まれてからの底力がわいてくる年齢でもない。

 絶対にあきらめない!

 あきらめたら、そこで試合終了!

 そんな風にイキってつぶれないでいられるのは、やはり30代前半までではないか。

 あきらめつつ、あきらめない。

 絶対にあきらめないが、あきらめるところはあきらめる。

 そんな断捨離をしたほうがいいのが、アラフォー世代の在り方ではないかと思うようになったのだ。