トランスポーター(1)

 トランスポーターを鑑賞。

 特別に優れたものや、新しいものはないが、男にとって心地いいものしかない映画。昭和どころか平成も終わってしまう時代に、この種の懐かしい作品がつくり続けられるのは、中年男性にとってありがたいことである。

 黒字は出たものの、続編をつくるほどのヒットではなかったそうだ。だがDVDがバカ売れし、シリーズ化が決定。中年男性がついハマってしまい、DVDに手が伸びてしまったのだろう。

 なんだかわかるのである。


 ●昭和テイストな懐かしい感じの主人公造形

 面倒な組織に所属することなく、一匹狼スタイルで運び屋をやる男。孤独を愛しているのだ。業界内での評価は高く、嫌いな仕事は断れる立場。過去に軍人経験があり、喧嘩は強い。

 いい車(ベンツ? BMW?)に乗り、ドライビングテクニックは抜群。自分に最もよく似合うデザインの、高そうなスーツを愛用。

 仕事とプライベートに自分のルールがあり、それに従って生きている。その方がストイックだが、快適でもあるからだ。

 今風のイケメンではないが、仕事上で関わることになった女性には何故か惚れられてしまう。だが己のルールに反するので、セックスに誘われても断るようにしている。

 ……って、なんという古風なキャラクター。ザ・昭和のセンス。テレビ東京の深夜枠。なんだか、そんな感じである。

 ぶっちゃけ、こんなキャラクター設定を企画会議でプレゼンされても、古すぎるからとボツにするしかない。

 ボツにするしかないんだが、とはいえ自分以外の誰かが映画化し、それを鑑賞してしまうと、やっぱり見ていて心地いいのである。特別なものはないんだが、いいものはいいんだよなあ。

 叶精作の新作劇画の読後感にも似ている。聞いたことない無名の原作者の名前がクレジットされているが、小池一夫が別のペンネームとしか思えないような安定したつくりのやつだ。

 これもまた、新しいものは何もないんだが、ひたすら居心地よく退屈しない。アメニティの高いエンタメ作品としか、形容のしないものなのだ。

 そして私はそんな作品もまた好きなのである。