隠し剣・鬼の爪
隠し剣・鬼の爪を鑑賞。
なんとなく藤沢周平の物語づくりとキャラづくりのパターンみたいなものが見えてきて、勉強になったりもしてきた。自作の参考にしたいところである。
●永瀬正敏の演技について
海坂藩とゆうか、山形県民の朴訥さや純朴さを、MAXで演じきったのはぶっちぎりで永瀬正敏。とぼけた味わいを出しすぎかもしれないとも思ったが、いやいや、藤沢作品のこの部分を原作以上に表現したのはさすがでしょう。
剣劇シーンの動きもキレがよく、アクションシーンで鍛えた真田広之でもないのに、ここまで遜色ないとはさすがとゆうか。鬼の爪が閃くシーンも、無駄のない動きでサクッと殺す凄みを、凄みを抑えつつさらりと普通に演じててさすがと感じた。
もっと時代劇で見たいと感じた。
●松たか子の演技について
時代劇なのに松たか子が現代人にしか見えないと不評だ。しかし、こんなもんじゃないか? 松たか子の役は竹内結子や木村佳乃が演じても、同じものになるのではないかと私は感じている。3人とも過不足ない感じが似てるとゆうか……。
●隠し剣・鬼の爪のシーンについて
私は重要なシーンはじっくり長く見たい派である。
だから永瀬正敏が鬼の爪を練習するシーンは、もっと長い時間をとって欲しかった。永瀬の殺意や必死感がじわじわと高まり、頂点に達するとこが見たかったのである。
実際に殺すシーンも同様。
必殺仕事人なら、テーマソングが鳴り始め、これから殺しますよと盛り上げながら、殺意が高まる永瀬が見栄をきりながら、しかしサクっと殺しちゃうとこだ。
そうゆうところを、ついつい見たくなってしまうのである。
しかし、それをやってしまうと、安物っぽくなるという批判は、あえて引き受けたい。
確かにとぼけた味わいで主人公を演じた永瀬正敏が、暗殺するというのに力むことなく、あっさりと殺すからこそ凄みがあるのだというのは、よくわかる。
日常生活のなかで、無駄な動きや力みや感情もなく、手ぎわよくさくっと暗殺。だからこそ、やばい。
御説ごもっとも。ザ・正論。反論の余地などない。
しかしなあ……。あまりにもあっさりしすぎて、薄味にも思えてしまうのはしかたないじゃんな。長い時間をとって、ゆっくりたっぷり盛り上げつつ、劇的に殺すシーンをついつい見たくもなってしまうのである。
批判する意図はないので、許してくれい。
●吹越満について
たそがれ清兵衛のとこで書き忘れたので、ここで書いときたい。
いいヤツなんだが頼りない友人役を、吹越満がリアル感たっぷりに演じた。そうゆう人にしか見えない。吹越がもともとからもってる、カッコよさというのを完全に消し去ってる。
すごいと感じた。
冷たい熱帯魚では、吹越は似た役を演じた。いいヤツで知的インテリなんだが、頼りないというキャラだ。
しかしその時は隠しても隠しきれないカッコよさがにじみ出ており、カッコよさは出しといたほうがいい役と判断した吹越がそう演じているのである。
イケメン感を出したり引っ込めたりできる役者って、吹越満くらいじゃないかと思った。
普通はイケメン感をだそうとしても、本人がカッコよくないから無理だったりする。またイケメン感を隠そうとしても、カッコいいからできなかったりもする。
ただ吹越満はそうでないのである。