鬼龍院花子の生涯
鬼龍院花子の生涯を鑑賞。
子供の頃にテレビで何度も見たことあるが、女優さんのヌードと、仲代達也の狂った演技が最大のお目当てであった。仲代のキレっぷりが子供心に大好きで、よくモノマネしたものだ。変わった子供と思われてたのは、不本意だったが……。
大人になってから鑑賞すると、仲代達也がマジで狂った男優であることに気づかされる。溶けた氷のように透明な濡れた目つきで演じるため、ヤバい薬をキメた人にしか見えないのだ。
こんなヤク中みたいな俳優だったっけかなあ……。
トーク番組などで見る仲代達也は、インテリな人格者に見えた。しかし狂気を演じるとなると、一転して薬物中毒なみに変貌してしまうあたりに、役者としての狂気を感じてしまう。
ヤクザ映画系の演技をする岩下志麻などの面々のヤクザ感の演技と、仲代達也の演技は全く別もの。異質である。
仲代達也は大藪晴彦の伊達邦彦を演じたこともあり、意外な配役だと違和感に首をかしげた。やっぱり松田優作のイメージが強い役だからである。やっぱり仲代よりも、松田ではないかと、ついつい考えてしまう。
しかし伊達邦彦は確か早稲田卒のインテリでもあるから、仲代達也のインテリ感は役になじむのである。そしてそれは松田優作にはない味わいだ。
そして平気で人を殺せる伊達邦彦の人間性を、「イッっちゃってるヤバい人間の狂気性」と解釈した場合、仲代のヤク中みたいな演技は正解ではあるのだ。
狂気にもいろんな種類があって、松田優作的な狂気もあれば、仲代達也的な狂気もある。どちらがより優れているかどうかはないので、役にあってるかどうかの違いなのではないか。
あと仲代が演じる役は文盲で文字が読めない。だから手紙を部下に読ませるのだが、無学な自分を恥じてもいる役なので、手紙を音読するように部下に命じる時に、一瞬の間がある。
こうゆう細かいとこまでつくりこむのはさすがなんだが、理解してる観客はいないだろうなあ……と思った。