まほろ駅前多田便利軒(2)

 ●松田龍平の演技について

 松田龍平が独自の存在感をもっているのは確かだが、もっと自分の個性を前面に押し出してもいいのではないか?

 どうもカメラに対して少しナナメった状態で、一歩奥にひっこんだ状態のことが多い気がするのだ。正確には、そんな空気感を私が勝手に感じているだけで、実際にそうではないのだが。

 もっとカメラに正面に構え、観客とむかいあって欲しいのである。

 そうゆうのがダサい……というのはわかる。安易でもある。しかし観客と向かい合わない男優ってどうなの?と思ってしまうのだ。ダサくて安易でも、彼がやるとそうでなくなる……という男優になれば良いだけではないかとも、思ってしまうわけだ。

 ついつい父親の松田優作を思い出してしまうのは、観客として良くないとこだ。しかし親父さんは常に観客と正面から向き合って、前に前に出てきてたよ……と言いたくなってしまうのだ。

 また映画の中で「なんじゃこりゃ!」と瑛太が吠え、松田が「なにそれ、似てない」と切り捨てるところは、松田優作の有名な太陽に吠えろでの殉職シーンを思い出させてもらい、ニンマリさせられた。


 ●瑛太の演技

 終盤の驚異の長まわしの演技には瞠目させられた。一か所だけ噛んでいるが、それすらリアリティを産んでいる。長々と喋る時に、普通の人間は噛むからだ。それを演じたにすぎないという解釈でいいと思う。だから監督もイキにしたわけで。

 イケメンだけど耳のデカい男だなあ……という印象で、特徴があるので記憶に残りやすい男優である。