下町ロケットが視聴率不振

 ■下町ロケットが視聴率不振

 下町ロケットが視聴率不振だそうな。そりゃ前回のヒットと比べれば少ないのだろうが、13.9%なら大成功じゃないの? これから視聴率も上がってくだろうし、まだまだ期待していいと思う。

 その上で「仮に」視聴率不振ということにして分析すると、主な理由は飽きられたことなのだと思う。地上波放映では二回め。しかし同種の作品として陸王があるから、実質的に三回めの放映だ。

 飽きられるのは無理もない。

 むろん、それをスタッフは想定している。原作がそもそも趣向をこらしているし、シナリオライターを変えるなどして、変化をつけようとしている。キャスティングも色々と冒険している。

 確かに下町ロケットのキャスティングには、色々と違和感がある。陸王の方が不自然ではなく、すわりがいいと感じた。

 しかし冒険的なキャスティングの下町ロケットとはいえ、役者さんの違った魅力を引き出すことに貢献してると思うのだ。悪役のピーターには違和感があったし、陸王ピエール瀧のほうがおさまりはいいと感じた。鉄板の岸部一徳國村隼で良かったのではないかとも思うし……。

 とはいえ見慣れてくるとピーターの悪役も、なじんでくる印象もあるのだ。神田正輝の悪役も何か違うと思わざるをえないが、慣れてくると違う印象がわいてくるのではないか。

 ピーターと神田の演技キャリアの上で、ターニングポイントになるのは間違いないし。本作によってステップアップするのは、間違いない。彼らの違った引き出しを開けられたのは現実だと思う。ベテラン役者ふくめて、育てるキャスティングと感じた。

 何より他作品では見られない悪役として、ピーターや神田正輝は異色であり個性的と感じた。視聴者がミスマッチと感じざるをえないものを、個性的な魅力に変えてくのが大事なとこと感じた。


 ●成功しているバラエティ枠の役者起用

 ネット世論を見ると、バラエティ枠のキャスティングが批判されてもいた。確かにバラエティ枠という「枠」を感じるし、それがゴリ推しや無理推しに感じてしまう人もいるだろう。

 しかし下町ロケットにおいて、バラエティ枠のキャスティングは、上手く機能していると感じる。前回のバカリズムの起用も、主要な役者さんよりもほどよく地味で、メインの役者を食わないサジ加減はほどよいと感じた。

 そのくせ、「仕事人」としての存在感はしっかりしている。

 バラエティ番組の熾烈な競争で勝ち残って来た芸人枠の人々だからこそ、理系エンジニアの地味さを表現できる。また地味だが、職業人としての輝きと迫力を醸し出せるのだ。

 いわゆるバイプレーヤーの役者さんとは、違った味わいが出せるのだ。イモトアヤコの地味なビジュアルながら、誇りをもって仕事に取り組む感じなど、身体をはって世界中でロケしてきた彼女とマッチしてると私は思ったのである。

 そりゃ、色々と足りないところも感じる。

 佃製作所の試作品を初めて手にした時は、もっとフェティッシュな感じで踏み込んだ演技でも良かったと思うのだ。理系女性の役なのだから、試作品をもっと目線でなめまわし、試作品の手ざわりを楽しむ様子があってもいいと感じた。

 2話めの愛車を修理するシーンも、車を愛する様子が足りないと感じた。そこはもっと大げさでわざとらしくてもいいから、視聴者にもっとわかりやすく伝えるべきではないかと思う。

 役者頭や役者脳は、まだまだだと感じた。

 しかしイモトアヤコがここまでやるとは私は想定しておらず、期待以上である。伸びしろのある楽しみな女優と感じた。地味女子役の中で、メインキャストを食わない範囲内で味わいを表現してく女優に大化けしそうなのである。


 ●石原プロダクション枠の起用も成功では?

 帝国重工の配役にも注目している。杉良太郎神田正輝といった顔ぶれで、歴史ある名門企業の大物感を出ていると感じた。佃製作所の徳重聡がいるとこからも、石原プロ枠のようなものがあるとの感触を受けてしまう。

 とはいえ徳重聡、やるではないかという印象だ。

 ぶっちゃけデビュー時の石原プロのゴリ推し感には、顔をしかめた。無理して売ってる感はあったのだ。顔もいいし、背も高い。役者としての華はある。とはいえ演技力は足りないでしょ。

 そう思った。

 しかしドラマの「相棒」でのテロリスト役が良かった。武器を持って戦う姿が絵になり、さすが刑事ドラマの石原プロ出身! と印象ががらりと良くなったのである。

 そして本作での変人理系エンジニアの怪演。

 これがあの大根役者だった徳重か!?

 ……という変貌ぶりに衝撃を受けてしまった。主演の阿部寛が扱いかねているヤバい感じがビンビンで、イケメン感はゼロ。別人になりきる演技力に、うなってしまった。

 いつのまに、演技派に大化けしちゃったの?

 デビュー当時の大根役者っぷりに辟易とさせられたものだが、キャリアを積んで成長。今ではすっかり演技派に。才能を見抜けなかった、当時の私の見識のなさを、お詫びしたいくらいである。