何もない男の死(2)

 彼は利用されていた。

 政治運動には使い捨ての鉄砲玉が必要だ。彼は意見の違う人たちに暴力をふるうのがウリだ。逮捕される危険があるのに、沖縄のデモ現場まで出かけていた。彼が金をたかれば、5万円を支払って支援する女性弁護士もいた。

 逮捕までされたのだから、「愛いやつ」ということで左翼系新聞に顔写真つきでインタビューが掲載された。韓国からも撮影クルーが取材に来た。死んだことも沖縄の左翼系新聞で報道されるほどだ。

 英雄あつかいだ。

 出たがりな性格の彼は、喜んだろう。

 暴力がウリのグループをつくり、ホームページまでつくっていた。彼の顔写真がデカデカと掲載されている。組長を名乗り、刺青を見せびらかしていた。

 超大手のヤクザ組織の構成員だと大嘘ついてもいた。

 そんな彼だから、マスコミ取材を楽しんでいたはずだ。自己顕示欲、承認欲求、観客へのサービス精神、そんなものが入り混じっていたはずだ。

 生活費に困窮し、バイトも続かず、金に困れば政治運動で暴力をふるって日当をもらうていどの人間だ。

 政治運動で知り合ったパヨク女性に、性的いたずらをするというオマケまでついた。それが原因で組織を追われる。仲間はずれにされたのだ。

 そんな何もないダメ人間が英雄あつかいされるのだから、ありがたいものだ。それが政治運動の現場である。だから人はそれにハマり、抜け出せなくなる。

 困ったことに、それを観察するのは面白いのだ。

 興味深く見物しながら、それにハマって抜け出せなくなってしまう自分がいる(苦笑)。

 政治運動はアスペルガーADHDにも深くかかわってくることなので、これからもちょいちょい書いてゆきたい。