秘密(1)

 秘密を鑑賞。

 ●演技について

 意外に広末涼子の演技がいい、と評すると怒られるだろうか? 演技経験不足の若いアイドルとは思えないのである。

 ただ若い肉体に、40代女性の心が宿っているという特殊な役どころでのみ発生する現象なのかなあ? という気がしないでもない。

 「実は40代女性」という先入観で広末の演技を見るから、若い女性の演技としてはズレている部分が、魅力に変わったのかもしれない。普通の若い男女の恋愛を演じた場合、つたないものになったのではないか。

 小林薫の演技は、なんか渡辺いっけいと似てるよな。渡辺でも大丈夫なんじゃないかという気がした。ちとコミカルになりそうだが……。

 ●シナリオについて

 バスの運転手の息子の初登場シーンがいい。彼の印象が次々に変化する構成で、いかにも映画シナリオ技法の基本に忠実な丁寧なつくり。ただ効いてるかどうか、ちょっと微妙だ。役じる金子賢も大根役者だし。

 途中で私には結末は見えた。物語展開上、そうならざるをえないからだ。とはいえ、その結末をどう処理するかが非常に気になった。

 映画に関して言えばわかりやすい中で、上手く処理してたと感じた。大衆的なオチで、すわりはいいのだ。ただ原作のほうが数段、上の結末らしい。原作は未読だが、たぶんそうだろうなあ。

 結末に関しては賛否両論だが、登場人物が夫婦ともにベストな決断をしたと思う。作品の裏テーマは死んだバス運転手のセリフどおり、「家族の幸せが、自分の幸せ」なのだ。登場人物はそのルールに従って行動し、一貫している。

 もはや通常の幸せはない夫婦なのだ。自分の存在が旦那を苦しめていると気づき、その苦痛は夫婦である限り続くと悟った妻は、自分から身をひいた。そうすれば夫は、別の女性と別の幸せをつかめる。妻は旦那を自由してやったのだ。

 夫も同様だ。

 自分が妻を苦しめており、夫婦である限り、この苦しみは永遠に続く。醜い口論も増えるだろう。だから身をひく。「家族の幸せが、自分の幸せ」だから。旦那もまた嫁を自由にしてやった。だから彼女は結婚した。

 お互いにベストの選択をしたのだ。

 すばらしいラストである。

 いくつかの映画レビューを見て痛感したが、誰もが納得するラストというのは、もはや難しい時代だ。むしろ賛否両論が激しく割れるラストの方が、優れているのかもしれない。

 それだけ複雑な時代だし、複雑なテーマを扱わざるをえない時代なのではなかろうか。

 

 ●娘の喪失が描かれなかった不思議

 映画では娘の心を失った悲しみ(肉体は元気だが)に、父母が全くもたないのが気になってしょうがなかったのだが、原作ではそのへんはちゃんと描かれているそうだ。やっぱ、そうだよなあ。